日経BP総合研究所 上席研究員 渡辺 和博
川口商工会議所が主催した2022年「第2回川口の元気経営大賞」の審査員をさせていただいたご縁で、大賞を受賞したフジムラ製作所とチャレンジみらい賞を受賞したレボルの社長に話を伺いました。
フジムラ製作所は従業員が110人の板金加工の会社で、少量多品種の製品を短納期で提供することで急成長しています。先代が起こした小さな町工場がリーマンショックの影響で苦境に陥ったとき、大手がやらないこと、できないことを必死で模索した結果、試作品などの少量品の加工を請け負うことに活路を見いだしたそうです。その後、設計データ受け入れから製造の自動化までデジタル化を徹底して、現在は1日500種類の製品を手掛け、少量多品種の短納期での製造を実現しています。
もう1社、話を伺ったレボルは、美容室チェーンを展開しているほか、創業時からの主力事業である美容室向け薬剤の製造卸の会社です。VR技術を取り入れた美容師の教育のための施設をつくってサービスの品質を高めたり、鏡にデジタルディスプレーを採用してお客さんの髪型を自由に変えてシミュレーションして見せたりすることで顧客満足度を上げています。地元の福祉施設と連携して、美容室で子どもたちの絵を飾るなど、地域との関わりも深めています。
両社とも、低価格勝負ではなく、相応の利益を出しながら急成長を続けています。話を伺いながら、顧客のわがまま(個別のニーズ)に向き合うことこそが高付加価値なビジネスを実現する鍵になっていると感じました。顧客のわがままをとは何かをもう少し考えてみると、「顧客の夢をかなえる」か、「困りごとを解決する」かの二つに分けられるでしょう。
「夢をかなえる」とは顧客にとって新たに手に入れたいものを提供したり、顧客が目指す姿の実現を後押ししたりすることです。「困りごとの解決」は文字通り、顧客に不足しているものや行き詰まっていることに対するソリューションの提供です。
どちらにしても、前提となるのは「顧客の夢」や「困りごと」というややエモーショナルな部分への共感が大切になってきます。単にモノやサービスをやりとりするだけでなく、顧客の満足の基となる考え方や状況に対して共感を持って向き合っていることが重要なのです。
先に挙げた両社とも、社員の教育や待遇の改善にとても力を入れています。営業職のように直接顧客と接するポジションでなくても、常に顧客を意識して求めるところや困りごとが理解できるよう、個々のスタッフのコミュニケーション力や対応できるスキルの向上を重視しています。何より、モチベーションを高く持ち、仕事に取り組んでもらうためには「とにかく給料を上げること」(フジムラ製作所の藤村智広社長)だと言います。今回、話を伺った2社とも、業界の常識から見れば「そんな非効率なことをしたら会社がつぶれる」(藤村社長)と言われたことに挑戦し、そこを乗り越えた先で成功をつかんでいました。
